突然の休日
10月のとある日。
思わぬタイミングで平日に休めることになった私は、ヨメも少年もいないので、久しぶりのソロキャンプにでも行ってみようかと思いながら前日の夜にネットサーフィンをしていると、ふと山頂でテント泊をしている方の記事が目にとまった。
これだ!
明日は登山をして山頂の360度ビューの景色を見ながらテント泊をしてみよう!
そこで、たまたま同じ日に平日休みだと言っていた、キャンプ仲間兼、カメラ仲間兼、登山仲間であるYAMA@CAMPさんにどうせヒマだろうと思って連絡してみた所、やっぱりヒマだったので、一緒に行くことになった。
数えるほどの登山経験しかない私が、思い付きで選んだ山は島根県にある三瓶山。
自然林と草原が美しい、島根県を代表する標高1125mの名峰で、相手にとって不足はない。(謎の上から目線)
早速押入れの中から半年ぶりに引っ張り出した45 リットルのザックに水を4.5 L、そこにテントや食料など寝袋などを詰め込み、ぱんぱんに膨れ上がったザックの重量はおよそ15 kg。
ちょっと試しに家の中を背負ってうろうろしてみたのだが、ものの数分で肩に食い込むザックの重さに強烈な不安に襲われた。
ホントにこんな思いの背負って山登れる!?
ちょうど4歳児をおんぶしながら2時間近く山道を登らなければならない状況(どんな状況?)を思い浮かべて頂ければ、その辛さは容易に想像できると思うが、持ち前のポジティブシンキングでそれ以上深く考えるのをやめて布団に潜り込んだ。(現実逃避)
出発
翌朝7時に目を覚ました私は、まだ紅葉には少し早い山道の中、二時間半ほど車を走らせて行くと、お昼前には三瓶山の麓に到着した。
三瓶山には全部で5つの登山道があるのだが、今回はその中でも比較的登りやすい初心者コースと言われている北の原にある姫逃池という登山道から登る予定だ。
この登山道のすぐ側には、北の原キャンプ場という場所があったので、受付に行って少し話を聞いてみることにした
こんにちは!
ちょっと今日山頂でテント泊をしてみようと思うんですけれども、天気予報を見たら結構風が強そうなんですけど大丈夫ですかね?
と登山素人丸出しの質問をストレートにぶつけてみた。
そもそも風が強くて大丈夫か大丈夫じゃないかなんて本人の気持ち次第であり、人に聞くような物ではない。
山頂は国立公園の中なので、基本的にはテント泊はダメですよ。。
あれ?でも SNS とかで山頂でテント泊している方とか見たんですが・・
ああ・・あれはマナー違反ですね・・
・・・
今日、ここのキャンプ場って空いてますかね・・?
初の山頂テント泊という夢は到着3分で儚くも消え去ってしまったのである。
しかし、皮肉にも心の奥底では、山頂テント泊ができなかった悔しさより、あの重たい荷物を持って上がらなくて済んだ事に対する安堵感の方が大きかったのであった。
※詳しい施設紹介はこちらをどうぞ。
設営
山頂テント泊はできなくなったが、登山自体は予定通り行うつもりなので、急いでチェックインを済ませ、まずは今夜の寝床を確保するためにテントを設営することにした。
平日ということもありだだっ広いフリーサイトにはテントを張る場所は選び放題だ。
今回は山頂でテントを張る予定だったので軽くてパッキングしやすいテンマクデザインのパンダテントを持ってきた。
ワンポールテントなので風にも強い。
このテントをお持ちでない方にのために説明すると、このテントはインナーテントとフライシートが別々の袋に入っている
設営方法はとてもシンプルでまずフライシートを立ち上げてそこにインナーテントを吊るす格好になるので、まず最初にフライシートを立てる必要がある。
一つ目の袋を開けると中に入っていたのはインナーテント。
これは後から中に吊るす方なのでこっちではない。二つ目の袋を開けてみた。
・・・
こちらもまさかのインナーテント。
この状況が理解できずに、しばらく頭の中でぐるぐると考えながらなんとか落ち着きを取り戻し、もういちど二つの袋を開けてみたが、やはりどちらの袋にもインナーテントが入っていて、フライシートらしき物はどこにも見当たらない。
久しぶりの使用で完全に油断していた私は、フライシート、夏用インナーテント、冬用インナーテントの3つの袋の内、間違えて夏用と冬用のインナーテントを持ってきてしまっていたのである。
当然他のテントを持ってきているハズもなく、車の中にあるものでどうにか考えた苦肉の策がこちら。
タープを張り、ハンギングチェーンからインナーテント吊るし、テントの概念を根底から覆す、まさかのノーポールテントが誕生した。
なんだかスケスケで恥ずかしい感じになってしまったが、見ようによってはお姫さまがお休みになる、天蓋(てんがい)に見えなくもない。
しかし、結果的に山頂テント泊が出来なくなったのはラッキーだったのかもしれない。
もしこのインナーテント×インナーテントが山頂で発覚したと思うとゾッとする。
そんな計画性も何もない、行き当たりばったりの私をあざ笑うかのように、サイトの横には公衆便所の看板が立っていた。
登山開始
なんとか今夜の寝床を確保した私達はさっそく山頂へ向かって登り始めた。
~中略~
(あまりの過酷な道のりだった為、写真を撮る余裕が一切ありませんでした)
およそ1時間30分後、三瓶山の頂上には二人の男が姿を現した。
汗だくになり、肩で息をしながら、足をプルプル震わせて、今にも崩れ落ちそうな膝を支えているのはもはや気力だけであった。
途中で何度も挫けそうになりながらも、ひっしで登った頂上から眺めるあまりの絶景に、今までの疲れは全て吹き飛び、おじさん二人は年甲斐もなくヤックルのようにぴょんぴょん山頂で飛び跳ねた。
恐らくこれがクライマーズハイという物だろう。(絶対違う)
少し冷静になり、恥ずかしくなった私達は、山頂でコーヒーを飲みながら写真を撮ったり、思い思いの時間を過ごした後に、1時間ほどかけて下山しキャンプ場へと戻った。
夕食
キャンプ場へ戻るとあたりはすっかり暗くなっていた。
焚火を囲んで、温めるだけの簡単な夕食を食べながら、あのバカみたいに重たいザックを山頂まで持って上がらなくて済んだことに心の底から喜びあった。
今日はあいにくの曇り空で星が全く見えないので写真撮影は諦めて、疲れきった私は9時には寝袋へ潜り込み、そのまま朝まで目覚めることはなかった。
翌朝
翌朝6時に目覚めた私は焚き火に火をつけ暖をとる。
あいにくの曇り空だが夜中は三瓶山から吹き下ろす風が強かった為か、幸いにも結露も全くない。
コーヒーを沸かし、朝食をとった後は、少年と約束したどんぐりをほんの300個程拾った所で、撤収の準備を始めた。
帰り際にYAMA@CAMPさんと、『これからは登山キャンプ用にウルトラライトなギアを集めなければならないですね。』と話しつつ、新たな沼の予感を感じたのであった。
コメント
いつもながらの面白い記事有り難う御座います!
くそ重いザック背負って登山キャンプ。
絶賛ヘルニア悪化中の私には想像もできませんが
(やったらダメだったけど)山頂でキャンプは気持ち良さそうですね~♪
で、結局は北の原でキャンプ。
でも、これも結果オーライでしょうか(*^^)v
パンダ付属インナーとSTDインナー。
インナー×インナーは「パンダあるある」ですね(笑)
袋の色とサイズがほぼ同じなんで積み込む時いつも間違えそうになります。
えびかにさんのリカバー力にも脱毛…いえ、脱帽です!
腰よりヒザがヤバかったですね
北の原はほんとに良い所で、ファミリーで行ってみたいです!
インナー✕インナーはあるある?という事はまさか、ゆうにんさんも…
あの絶望感は思い出しただけでもゾッとします。マジックで書くしかないですかね(笑)