週末の夜
とある金曜日の夜、私は一人で車を走らせていた。
街灯もまばらな曲がりくねった山道をゆっくりと進んで行くと、目の前には少し広めの空き地が広がってきた。
着いた先は海田総合公園キャンプ場だ。
今年に入ってから仕事の忙しさも相俟って、宿泊を伴うキャンプは一度も行けていなかった私は、ヨメに土下座をして快諾を得て、週末の仕事終わりにキャンプへと来たのであった。
奇妙な隣人
日中は暖かくなり始めた3月の終わりだが、まだまだ寒暖の差も激しく、日も短い。
キャンプ場に着いた時刻は19:00時。
辺りは既に真っ暗になっていたので、人気のない林間サイトは心細く、ヘッドライトを頭に着けて小さな音でお気に入りのオクラホマミキサーを流しながらサイトを軽く一周した。
金曜日の夜にも関わらず、既に10組以上のキャンパーさんが楽しそうに思い思いの夜を過ごしている。
一通り散策した後、トイレと炊事場がの近くにあるこじんまりとしたサイトを今夜の寝床にすることにした。
一つ隣のサイトにはソロキャンパーの男性が焚火を楽しんでいる。
こんばんは。
軽く挨拶をすまして車から荷物を下ろし始めた。
この海田総合公園キャンプ場はオートサイトではないので、荷物は手運びとなり、暗闇の中ヘッドライト一つで荷物の搬入を始めた。
するとそれを見かねたのか、先程のソロキャンプの男性が声を掛けてきた。
荷物運びを手伝いましょうか?
荷物運びを手伝わせるのを申し訳ないという思いと、せっかくのご厚意を断るのも忍びない思いが入り混じり、少し躊躇しながらもそのご厚意に甘えた所、けっきょく荷物の殆どをその男性に運んでもらったのである。
こういった人の優しさに触れ合えるのもキャンプの醍醐味であるが、まだ軽く挨拶をかわした程度なのにここまでしてくれる男性に少し奇妙な感覚を覚えた。
設営
今回はソロキャンプで時間もあまりなかったので、簡単設営できるテンマクデザインのパンダクラシックをチョイス。
先程の男性の方が手伝ってくれた事もあり、設営はあっという間に終わり、晩御飯の準備を始めた。
スーパーで買った安めのステーキ肉と惣菜をビールで流し込み、先程の男性と世間話をしながら三か月ぶりのキャンプを楽しむ事になった。
男性によると、週末は家族サービスで忙しく、奥様から金曜日の夜にだけキャンプに行く事を許されているようで、『それがささやかな楽しみなんですよ』と少し照れ臭そうにはにかみながら次のチューハイに手を伸ばした。
すっかり意気投合した私達はキャンプやお互いの趣味のカメラの話で盛り上がり、あっという間に夜は更けていき、それはまるで旧知の友人と酒を酌み交わしているような不思議な感覚に陥りながら寝袋に潜り込んだ。
翌朝
今日は昼から雨予報の為、朝から生憎の曇り模様。
まだ眠い目を擦りながら焚火に火をつけて、久しぶりにキャンプ場でコーヒーを入れた。
静かな林間サイトに焚火とコーヒーの香りが立ち込めて、至福の時間を楽しんでいると、その香りに誘われるように男性もハンモックの中から姿を現した。
朝食
私の朝食は簡単にカップラーメンと昨日の残りのギョーザ、男性はレトルトカレーという、二人とも育ち盛りの中学二年生のような朝ごはんを食べた後は、片付けをしながらお互いにおもいおもいの時間を過ごす。
カメラを持って場内を散策していると、昨日の夜は暗くて気づかなかったが、キャンプ場内には桜が咲き、春の訪れを告げていた。
別れ
今日は普段とは違い、金曜の夜に強行したキャンプだった為、帰ってから父親の務め(子供の相手)をしなければならないので、10時には撤収作業を全て終えた。
これを怠ると金曜日の夜にキャンプをする事は二度と出来ないであろう事は重々承知である。
後ろ髪を引かれる思いで一夜を共にした男性に別れを告げ、車のエンジンをかけて家路へついたのだが、帰りの道中に一晩中あの男性に感じていた奇妙な感覚の答えがハッキリと分かったような気がした。
そういえば、あの男性はよく考えたらYAMA@CAMPさんだったな・・
以上、えびかにでした。
※3/19日現在、場内に車道を作っている為、炊事棟が断水しています。トイレ、手洗いは使用可能。
コメント
はじめまして
楽しく拝見させていただきました。
海田のキャンプ場いいですね。
二人のコラボ愉しかったです。
ちなみに私は嫁の許可をもらってやっと行けたのにいっぱいで入れませんでした。
はじめまして!コメントありがとうございます♪
海田キャンプ場は家から比較的近いのでソロの時はよく利用していますが、人が多すぎず、少なすぎずでのんびりするのには最適ですね^^
駐車場がもう少し多ければいいのですけどね><